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週末に読みたい!非日常が感じられる村上春樹の世界

1Q84

村上 春樹

「青豆雅美」という女性と「川奈天吾」という男性のラブストーリーが本筋であるが、そのふたりの間に起こる出来事は「パラレルワールド」という特異な空間で繰り広げられる。

 

「青豆」は日常的にDVを繰り返す男の殺害を請け負う「仕事人」。一方、「天吾」はとある雑誌の編集者。ふたりは「1Q84」という世界を全く別々に体験し、物語の途中から「20数年ぶりに出会う」形で合流していく。

 

そもそもふたりは小学校の同級生。お互いに惹かれ合っていたが、いつしか会うこともなくなって行った経緯を持つ。しかし「青豆」は「天吾」を20数年間想い続けるのであるが…。

舞台は1984年の世界と「1Q84」の世界

現実世界では1984年が舞台となっている。その「パラレルワールド」が「1Q84」の世界。「パラレルワールド」は直訳すると「並行世界」となるが、「並行宇宙」、「並行時空」などとも呼ばれる。いわゆる「四次元」などと言われる「異次元空間」ではなく、我々と同じ3次元空間ではあるのだが、「時間や空間は同じである別の世界」なのである。


青豆は請け負った「殺し」を実行するためにタクシーに乗って首都高速を走っていたが、渋滞で予定の時間に遅れそうになる。そこでタクシーを降り、高速道路脇にある階段を降りて目的地に向かう。

 

その時に、すれ違った警官が持っている拳銃が「通常は持っているはずでないモノ(殺し屋ならではの観点である)」であることに気付く、そして空にはふたつの月が…。青豆がパラレルワールド「1Q84」に入り込んでしまったことを悟る場面である。


一方、「天吾」は「深田絵里子」という17歳の少女が書いた「空気さなぎ」という小説を巡って「1Q84」の世界に遭遇する。実在するはずのない「空気さなぎ」が存在する奇妙な世界に紛れ込んでしまう。戸惑いとともに、少女がなぜその世界のことを知っているのか…疑問が疑問を呼ぶ…。 

身近な別世界を想わせる「虎の看板」

この物語が「遠い別世界の話」ではなく「身近なパラレルワールド」と感じられる記述がある。それが「虎の看板」の話だ。物語中に何度か出てくる。

 

首都高速を走行中に見える看板に描かれている虎は現実世界では「右の頬を前に向けている」、でも今見ている虎は「左の頬を前に向けている」…。「反転」している…。一見すると何が変わっているか分からない世界。「月がふたつ出る」や「空気さなぎが出現する」など特異な現象が起こらない限り、何が変わっているのか分からない…。そう、「反転しているだけの世界」なのだ。

 

もしかすると目には見えないが、感じ取ることもできないが、今の自分のすぐ隣に存在する「反転した世界」に過ぎないのかも知れない。鏡に映る自分…。鏡の向こうにはこちらと同じだが「反転」した空間が現実に見える…そのくらい身近なパラレルワールド…そう考えると背筋に寒さを覚えるような「身近さ」を感じる。

若き日の想いがパラレルワールドとなって表れる

個人的にガラではないが、若き日の「恋愛」について考えた。「○○ちゃんが好き」と想い始めると、いろいろとふたりの関係を想像する。「身体の関係」ということだけでなく、「愛」に満ちたふたりの世界。

 

要するに「イチャイチャする場面」を想像して幸せな気持ちに浸る。「恋に恋する」なんて言い方もできる。相思相愛が成立した瞬間、そこには現実の「ふたりだけの世界」が形成される。家族でさえも見えない「ふたりだけの幸せな世界」である。


仮に「1Q84」の世界が青豆と天吾の「ふたりだけの世界」であるなら、それは幼少の頃から思い続けたそれぞれの気持ちが「1Q84」という世界となってふたりの前に出現したのかも知れない。本来は想像だけで終わるはずの世界だが、ふたり強いの想いがあたかも現実のように「1Q84」の世界を形成したのかも知れない。

 

日々の喧騒を忘れて非日常に浸りたい方には、ぜひともオススメしたい物語である。