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好きな本を好きなだけ。

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自分の望み通りにならないとき、あなたならどうする?

置かれた場所で咲きなさい

渡辺和子

私達は、人生に対して様々な夢を抱く。

 

ハイレベルの学校を卒業し、一流の会社に就職する。事業で成功し、社会的成功と大きな家を手に入れる。美しい配偶者と可愛い子どもたちに恵まれ、健康で家庭円満な日々を送る、などなど。


しかし、人生において、望んだことがそのまま成就する人は、ごくまれである。それでは、人生において自分の望むとおりにならないときに、私達は一体どうすればよいのだろうか。

 

この本の著者である渡辺和子氏は、教育総監・渡辺錠太郎の次女として生まれた。豊かな家庭に生まれた彼女であったが、その人生は決して穏やかな道のりではなかった。現在、ノートルダム清心学園理事長を務める彼女が説く、人の生き方の真の極意とは。真に豊かな人生を歩むために必要なことが、静かな語り口で語られる。

激動の生涯から~置かれた場所で咲く生き方とは

筆者は30歳間際でカトリックの修道院に入り、36歳の若さでノートルダム清心女子大学の学長に就任している。一見、順風満帆な人生を歩んできたように思えるが、その道のりは苦難の連続であったという。

 

36歳の若さで学長という風あたりの強い立場に置かれ、様々な人間関係の軋轢に悩む日々。自信を喪失し、修道院を出ることまで考えた彼女に、一人の人が贈ってくれた言葉が「置かれたところで咲きなさい」だった。

 

人生において、置かれた場所に不満を持ちながら生きていては、自分は環境の奴隷でしかない。どんなところに置かれてもそこで主人となり自分の花を咲かせようと決意。その時こそが、彼女の人生の大きなターニングポイントとなったのである。

心病むことによって初めて見えてきた世界

筆者は50歳のとき、過労が原因でうつ病を患う。一時期は治療のために入院もし、自らの命を断つことすら考えたという。

 

しかし彼女は後に、この時期を振り返ってこのように言っている。「病気という人生の穴は、それまで見ることができなかった多くのものを見せてくれました」と。自らが病むことによって、他人の優しさをより深く感じることができるようになった、と。


人生のなかには、病気であったり、事業の失敗であったり様々な挫折に出会うことがある。しかし、その人生の中でぽっかりと空いた穴を、急いで埋めることも大切かもしれないが、人生には、その穴を通してしか見ることができないことも確かに存在する。そしてそれは、人が生きて行くうえでとても大切なことを教えてくれるのである。

生きることは愛すること

筆者の父親、渡辺錠太郎は、昭和初期の軍人で、2.26事件によって銃殺されている。彼女はわずか9歳のとき、一緒に寝ていた実の父が殺されていく姿を、目の前で見ていたのである。年を取ってから生まれた末っ子の彼女を父は大変可愛がってくれたそうであり、彼女は父について「その短い間に一生涯分の愛情を受けた」と語っている。

 

ノートルダム清心学園理事長を務める筆者の元には、日々、悩みを抱えた多くの学生が訪れる。彼女は一人の教育者として、子どもたちを、自分の家庭や日常生活のなかで進んで人を許し、愛することができる存在として育てたいと語っている。

 

そしてそれは、何気ない挨拶や、言葉がけから実践していくことができるのだという。その彼女の生き方の根っこには、幼い日に父から受けた愛情が深く息づいていることを示される。私達が子どもに遺してやるべきものは、お金や物質よりも、愛情そのものであるのではないかと思わされるのである。

 



この本は、お金や社会的成功を勝ち取り、失敗のない人生を歩むためのいわばハウツー本ではない。かえって、失敗や挫折、苦しみを経ることによってこそ、人は真に成熟ができるのだと説いている。

 

自らの人生に裏打ちされた深い言葉は、進路に悩む若者、子育てに奮闘する親たち、年を重ねたシニア世代の人々と、あらゆる世代の人たちの心に深く響くのではないだろうか。