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好きな本を好きなだけ。

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「花舞う里」で体感する伝統神楽「花祭り」と人間のあるべき姿

花舞う里

古内一絵

 

本書は、実際に愛知県奥三河で行われている「花祭り」を題材に創作された物語である。


「花祭り」は国の重要無形民俗文化財にも指定されており、主役が鬼で歴史ある祭りと言える。そんな花祭りが織り成す人間模様ある感動物語だ。

 

伝統神楽の舞いと少年たちの姿をこの物語を通じて感じ取ってみてはいかがだろうか?

 

作者・古内一絵と『花舞う里』

作家・古内一絵って誰?そう思いの方もいることだろう。


世の中には知らない作家がたくさんおり、中には消えていく作家もいるでしょう。だが、この作家は違う。そう思いたい。


面白いか、面白くないかは読み手の感じ方で変わってくるとは思うが、この機会に是非手に取ってほしい作品だと私は思う。


だからと言って、私だけがオススメするわけではない。

 

本書は、2016年5月刊行された本で某新聞社の紙面に書評も掲載されて高評価されている事実がある。本書を含め、今後も追ってみたい作家である。

都会から山奥へ

主人公の杉本潤は中学生。


親友が亡くなったのは僕のせいだと自分を責めてしまい、心が壊れてしまう。周りの目も違ってしまったことにも気づいている。どう考えても、そんな場所にいたくはない。そう思うことが普通だ。私だったら耐えられないだろう。

 

そんな折、潤は母の故郷の山奥の愛知県奥三河へ引っ越すことに。そこには伝統神楽の舞いを行う花祭りがあった。転校した学校はというとクラスメイトが三人しかいないという。この転校は潤にとって転機になっただろう。

 

奥三河という土地で潤の心は変化していく。伝統神楽の舞いが潤の心を変えていく。

 

心を閉ざした潤がどのようにして悲しみを乗り越えて強く生きていくのかを見てほしい。花祭りの中での神楽の舞いの素晴らしさも感じてほしい。

辛いのは自分だけではない

人とは、誰しも心に傷を持っているものなのかもしれない。けど、辛いのは自分だけだと思っている人は結構いるのだろう。

 

辛い時は、周りに目を向けられないものだ。


この物語でもそうだ。潤だけが辛く悲しい経験をしているわけではない。クラスメイトもまた辛く悲しい現実とともに生きている。いろいろな人間模様が心に染み入るだろう。

 

物語を通して、読者自身も振り返ってみてほしい。

 

自分だけがなんでこんな辛い思いをしなくてはいけないのだ。そう嘆いている人は、少しだけでもいいから周りに目を向けてほしい。

 

もしかしたら、見守ってくれている存在が近くにいないだろうか。同じように辛い目にあっている者はいないだろうか。そして、手を取り解決策を見出すことが出来るかもしれないと思ってほしい。


そんな仲間がいれば、親友として大きな壁を乗り越えることが出来るだろう。
決して最悪の判断を下さないでほしいと願う。

一体となることで、運命は切り開かれるのかもしれない

同じ方向へと突き進むことで、思わぬ団結力が出来上がることがある。この話では、それが伝統神楽の舞いを踊ること。ただの祭りではない。

 

近隣の町全体で行われる花祭りは歴史があり親から子へ子から孫へと受け継いでいくもの。精も根も尽き果てるまで何時間もの間踊り続けるようなすごい祭りだ。それくらい舞い続けるからこそ、迷いも吹っ切れるのかもしれない。何か気づきがあるのかもしれない。

 

まさに「神懸る」という表現がぴったりな場面を見ることが出来るだろう。文章から熱気が伝わってくるようであり、舞っている姿が眼前に見えてくるような錯覚さえ起きる。私にはそう感じた。潤はこの奥三河に来る運命だったのだろう。

 

潤の成長をここに見出している。その姿を是非読んで体感してもらいたい。

 


 

『花舞う里』の物語の登場人物たちや花祭りでの人間関係から人のあるべき姿が学べることだろう。


鬼は怖くて退治する者だという概念を覆す奥三河の花祭りを知ってしまったことで、伝統神楽の舞いを自分の目でも見たくなるだろう。

 

悩みある人がこの舞いを目にしたら、何か道が開けることもあるかもしれない。大事な何かを再認識出来る物語であると私は考える。

 

本書がきっかけで奥三河の花祭りに興味を持つ人が増えたのなら、きっと地元の人達は喜ぶだろう。それが地方の活性化にも繋がると信じたい。


少しでも心惹かれるものがあれば、本書を手に取ってみてほしいものだ。