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好きな本を好きなだけ。

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不透明な現代社会に負けない自分で人生を決める大切さを学ぼう

だれも知らない小さな国―コロボックル物語 1

佐藤 さとる

小さな頃信じていた事の一つに、小人の存在があった。小人は私たちと近い所に住んでいて信じている人の所にしか現れないが、こちらが仲良くしたいと思ったらいつでも良い友人になってくれるものだ。この本はそんな小人の存在を思い出させてくれるだけでなく、自然との共生が人間にとっていかに大切か教えてくれる。

文章で絵を表した物語

主人公の小学三年生の「ぼく」には地元の人が近寄らない小山に自分だけの秘密の場所を持っていた。「ぼく」が住んでいる辺りは緑がいっぱいの自然豊かな場所で、草をかき分けながら踏み入れて行くとその場所が現れる。現在の子供が疑似体験出来るのはもちろんだが、大人も一緒になって子供時代に戻れる本はそうそうあるものではない。

 

元々子供のために書かれた本だったが、村上勉さんの挿絵と佐藤さとるさんの黄金コンビは大人にも魅力的だ。村上さんのコロボックルが佐藤さんの文を寄り添っているように描かれているが、佐藤さんが紡いだ物語も丹念に描いた風景画のようなので、本全体が絵画のようである。都市部に住んでいる人は特に憧れる事だろう。

豊かな自然の中で育まれた人間関係

始めは一人だった「ぼく」は秘密の場所近くで小人や小さな女の子に遭遇するが、他にもたくさんの人達と関わるようになる。その地に伝わる「小法師さま(こぼしさま)」の話を聞かせてくれたトマトのおばあさんや小山の持ち主の峯のおやじさんなど、キーマンも登場して物語が深みを増す。

 

「ぼく」は成長した後地元で就職し、電気技師として働く事になるが、その理由はコロボックルと愛する小山の自然、人間関係に恵まれた事だろう。小山で出会った小さな女の子とも成長してから再会を果たす事が出来たが、彼女との間に愛情が芽生える経緯も読みどころである。

環境問題への警鐘

成長した「ぼく」はコロボックルと友達になるが、愛する小山が道路を作るために切り崩されると言う噂を耳にする。「ぼく」はコロボックルと一緒に工事計画をやめさせるため知恵を出し合い、工事を断念させる事に成功するのだ。コロボックルは蕗が群生するような自然の中にしか現れない。小山のような自然が豊かな場所の方が彼らの良い住処になるからだ。普段は草や木の陰に隠れていなければならないが、人間が寝静まった時は活発に動き回る事が出来るし、味方になると見込んだ人間の夢の中にも姿を現す事もある。

 

一時的な利益のために娯楽施設などの建物や道路を作るのは良いが、環境破壊した後に残るのは何かという事をこの物語で考えさせられる。現代社会ではコロボックルが住めない場所が多いようだ。愛する人のために働く事は時には反対側の誰かの幸福を犠牲にする。しかし、目に見える物だけではなく見えない物の存在も大事にする事が、今後の経済や文化の発展につながる事だろう。この本では人間と自然の共存共栄を願っている。


最初はコロボックルの可愛らしさに惹かれて読んだ物語だったが、読んでいくうちに大人にも十分通用する話である事が分かる。今は情報過多で子供に「知らない人が話しかけても口を聞いてはいけない」と言ったり、「夢を持たないように」と言い聞かせている母親が増えてきたと言われる。


この本に書かれているのはファンタジーだが、そんな現代の子供や昔子供だった大人にも全ての物に愛情を注ぐ事の素晴らしさを教えてくれる。夢を持たない人はこの本を受け付けないだろう。コロボックルの存在と企業の発展が両立するのも現代社会の夢だからだ。自分の夢を叶えるためには賛同する他の人達の協力が必要だが、時には思い切った手段も必要である。携帯電話の電源を切り、沢山のネガティブな情報をシャットアウトして、自分が好きな方向に行く努力をする事が大事だ。


沢山の子供やこれから夢をかなえたい人にはぜひ読んでもらいたい本である。