Reader

好きな本を好きなだけ。

Reader

好きな本を好きなだけ。

葉っぱビジネスの成功事例からプロジェクトの企画や管理を学ぼう。

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生

横石 知二

徳島県にある、総人口2,000人余りの小さな町、上勝町(かみかつちょう)

 

この町を支えてきた農業は停滞し、先行きは暗かった。そんな町にやってきた当時21歳の「よそもの」が「葉っぱビジネス」を起こし、累積売上高20億円を突破するまでの約20年にわたる再生物語。それが今回ご紹介する『そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生』だ。

 

料理に添える葉っぱや花などの「つまもの」その種類は今では320種類を超え、年間売上は3億円に迫る。つまもの市場の全国シェアで8割を占めるほどになったのだ。

葉っぱを拾って販売するだけでそんな売上が立つのか

そう思うかもしれないが、実際に導入されたPOSシステムやファックス、パソコンを駆使し、毎日の葉っぱの相場をみて、市場の流れを読んでいるおばあちゃんたちの仕事っぷりを知れば、納得すること間違いなしだ。彼女たちの収入は、多い月に売上200万円、年収1,000万円を越える家も出ている。そして平均年齢は70歳である。新築・増築、改装する家も増えてきているというから驚きだ。

 

ただし、横石氏が町に来てからすぐに葉っぱビジネスで成功したわけではない。そこに至るまでのプロセスも見逃せない。町にやってきて2年目に異常寒波で主力のミカンが全滅。そこから季節物の野菜栽培を始めて成功。さらに、一年中収穫できる仕組みが必要と考え、シイタケの栽培で急成長。そして、女性や高齢者でも稼げる仕事をと「彩」事業で大成功という3つのステップを踏んでいる。

女性が変わらなければ、地域は変わらない

横石氏が町にやってきてまず一番に驚いたというエピソードがある。町の60代から70代の男性たちが、朝っぱらから一升瓶を提げて農協や役場に集まり酒を呑み、くだを巻きながら、補助金がいくらだの、国が悪い、役場が悪いだのといった愚痴を、えんえんしゃべり続けていたという。

 

そんな光景を目にして、横石氏は、女の人が表に出てくるような形にしないとダメだという強い意識を持つようになる。「女の人が変わらなければ、地域は変わらない」と。

女性や高齢者でもできる仕事はないかと考え続けていたとき、葉っぱと出会った。

 

横石氏のおばあちゃんたちへの接し方も見事だ。毎日終業時刻がくると、商品の入ったパレットを山のように積んでこうお願いするそうだ。「あと15分だけやって!儲けになるからやって!」

 

この「あと15分だけ」が非常に大事なのだ。仕事を「もう少し頑張ろう」と思うか、疲れたから「もうやめよう」と思うかで、結果は全然違ってくる。数日ではわからないが、1年も経てばその差は歴然だ。

葉っぱビジネスを思いついた「ある出来事」

「葉っぱがビジネスになる!」と思いついたのは、寿司屋で見かけた女の子が、つまものの葉っぱを大事そうにハンカチに包んでいる様子を見たことがきっかけだ。町の復活を願い、女性や高齢者でもできる仕事はないかと、四六時中考え続けていたからこその気づきといえよう。目標を定めたら周りからの反対をものともせず、とことん進むバイタリティは一体どこから湧いてくるのか。

 

ここで少し、著者の横石氏について書いてみる。横石氏は1957年生まれ。21歳のとき、上勝町農業協同組合へ営農指導員として入社。見ず知らずの土地にやってきた若者がはじめにしたことは、農家を一軒一軒あいさつしてまわり、町の地理や住人の顔と名前、誰が何を栽培しているかなどを覚えたことだ。年間労働時間4500時間。1年365日、休みなしで毎日12時間以上、正月もお盆も返上でがむしゃらに働いた。

 

つまものの勉強をするために毎日のように料亭に通い、当時の手取りで15万円くらいのなか、給料はすべてつぎ込み、家には1円も入れていなかったという。

 

そして37歳のとき、その時点でも手取りの給料が18万円ほどだったため、将来のことを考え農協に辞表を出したが、町の人たちは大騒ぎだ。「彩部会(いろどりぶかい)」177人全員の「辞めないでほしい」という手書きの嘆願書を受けた横石氏は、農協から役場への異例の転籍をする。ちなみに給料は、そのときに10万円上がったそうだ。その後の株式会社いろどりの設立、取締役への就任を経て、51歳のとき代表取締役社長になっている。

 

挿絵として入っている手書きの嘆願書からは、町の住人の願いが聞こえてくるような強い思いを感じずにはいられない。

葉っぱビジネスを普段の業務に活かすヒント

本書を通して、横石氏の独自のビジネス実践法が展開されている。日々のおばあちゃんたちへの声かけの中から、普段の業務に活かせるヒントを見いだせるかもしれない。

 

「葉っぱ」を別の「何か」に置き換えてみると、普段の景色が違って見えるだろう。

それまで補助金に頼ることばかり考えていた小さな町が「彩」をはじめとした産業の力で再生できた。2007年からは町営の老人ホームが廃止されたという。葉っぱビジネスがおばあちゃんたちの意識を変え、生きがいになったのだ。


横石氏はこう振り返る。「福祉」とはみんなが幸せになることであって、「してあげる」ことでもなければ「いたわる」ことでもない。若者から高齢者まで、一人ひとり地域の中で自分の出番があり、働いて評価され、社会とつながっていると感じられれば働くのはともて楽しいことになる。

 

最後に、横石氏がおばあちゃんたちに言い続けてきたことを引用して本書の紹介を終えよう。

「こつこつ商売」が大事だよ。ホームランを一発狙うよりも、小さなヒットを積み重ねる方が、ごついことになる。