Reader

好きな本を好きなだけ。

Reader

好きな本を好きなだけ。

白夜行で学んだ子育てと自分に得られるメリット。

白夜行

東野 圭吾

とある男性(桐原洋介)の殺人事件を巡っての物語であるが、「幼児虐待」「育児放棄」「児童買春」等、現代の社会問題に強い意見提言がなされている。守られることのない子供たちの生き方、弱者をないがしろにした大人たちの末路を「謎解き」のようなタッチで描いる物語である。

廃ビルで死体となって見つかる哀れな大人の最期

ある日、桐原洋介という男が廃ビルの一室で殺されていた。争った形跡がなく、顔見知りの犯行との見方、愛人と噂されている西本文代が第一の容疑者となった。

 

しかし文代にはアリバイがあった。推定犯行時刻に近くの公園でひとりブランコに乗りぼんやりしているところが目撃されていたのだ。洋介には幼女に対する性癖があり、その筋からの捜査も進められるが、手掛かりはほとんどない。

物語の主人公はふたりの子供

洋介と文代にはそれぞれ子供がいた。「桐原亮司」と「西本雪穂」。物語の初頭ではふたりは共に小学6年生。


図書館で知り合った二人は、お互いに惹かれ合い、繰り返される図書館でのひと時を楽しんでいた。雪穂は美人の母親に似た雪のような白い肌を持つ美少女…いや美少女の原石といったところ。亮二が自然と恋心を抱くのも無理はない。純粋な初恋。

 

年齢的にも初めての恋としてはちょうどよい年頃。順調に成長したかに思われた亮二の人生があるとき劇的に変わる。

親の影響を受けるべき時期

人は様々な人間関係の中で人からの影響を受けて成長する。産まれたばかりの時は「親」とだけ人間関係を持つが、やがて兄弟、親戚、友達、学校の先生、先輩後輩、上司部下、恋人…年齢を重ねるに従って「影響を受ける」対象は変化していく。

 

ただ少なくとも幼少期から10代中盤までは「親」からの影響が最も大きいはずである。その時期をないがしろにされた子供たちが…その後、どのように成長していくか、どのように成長してしまうのか、この物語主張する部分なのだと感じる。

世代交代に失敗した家族の悲劇

純粋なミステリー小説として読んでも面白いのだが「世代交代」に失敗した家族の悲劇を描いた物語と読み取ることもできる。「洋介」のみならず、物語中盤で「文代」も不可解な死を遂げるが、最終的には「弱者(子供)をないがしろにした報い」を受けて死んだことが明らかになる。

 

そして、自らの不徳により自らが報いを受けるだけならまだしも、その影響は「次の世代」にも降りかかってしまう。「亮司」と「雪穂」の「その後の人生」は決して安らかなモノではない。波乱に満ちた険しい人生となってしまう。

 

それは自ら招いた部分もあるだろうが、そもそもは「前の世代」から与えられたモノである。世襲された「悲劇」を背負わされる「亮司」と「雪穂」の数奇な人生は、この物語のもうひとつの見どころである。

子育ては他人事ではない

冒頭で触れた「幼児虐待」「育児放棄」「児童買春」等の問題を起こす人物、もちろん「子育てに対する認識や覚悟が甘い」のであるが、なぜ「認識が甘い」のだろうか。それは「自分の子供は自分とは別」「いずれ自分から離れ、自分とは違う人生を歩く」と考えているからだと思う。

 

「所詮別の…」と感じた瞬間に自分の時間を割いて世話をする気持ちを失ってしまう…それが上記問題を生み出す元凶なのだと思う。


しかし、「所詮自分から離れる」ことはあたり前である。「血を分けた家族を大切に見守る」という心を持てないのならせめて「自分が弱くなったら面倒を見てくれるのは自分の子供である」という認識を持てないものだろうか。

 

しっかりと育て、能力も認識も整った大人に成長した子供は、世代が変わった時、自分たちを支えてくれる。しっかり育てなければ、その報いも自分が受けるのだ。

 

「洋介」と「文子」は「その報い」を受けたのだ。子育てとは結局「自分がしたことが自分に返ってくる」と考えれば「幼児虐待」「育児放棄」「児童買春」など起こるはずがないと感じるのだ。